STAP細胞にまつわるデマ

 よく「ドイツとアメリカの研究でSTAP細胞は実在することが確かめられた。小保方は嵌められた被害者だ。」というデマを見る。

 特にニコニコ動画でよく見るんだけど、訂正しようにもコメントの文字数制限がキツすぎていつも歯がゆい思いをする。ので、ここで吐き出しておこう。

 

 このデマを信じている人は、

①”STAP細胞”という種類の細胞が存在していると思っている

②”STAP細胞”の研究が、”体細胞の分化を元に戻すことが可能である”という理論的アイデアと、その製法のアイデアの2つの部分から成り立っていることを知らず、小保方がかかわっているのは製法のみである、ということを知らない

陰謀論脊髄反射的に信じ込むのが得意

の3つの特徴のどれかを持っていると思う。

 

 ③は論外として、①は、”STAP細胞”の存在を「ビックフットは実在するか否か」方式に考えてしまう場合。つまり、”STAP細胞”を「筋細胞」のような”種名”としてとらえてしまい、目撃情報(研究結果)が嘘か本当か、という風にとらえてしまうわけですね。

 でもこのデマの中で使われている”STAP細胞”という言葉は、概念的なくくりの大きさから言えば「ビックフット」のような”種名”ではなく、むしろ「類人猿UMA」のような”類名”なのです。だもんで、①みたいな人は「”STAP細胞”があった」という情報を即「小保方は嘘をついていなかった」と変換してしまうわけです。

(というか、このデマはそういう勘違いをさせるために、わざわざ”STAP細胞”という言葉を種名かつ類名として使っている節があります(本来STAP細胞は種名だったはず)。)

 

 ②もそれにかかわるんだけど、”STAP細胞”が類名として使われているのが分かっていても、研究上”類名の提唱”と”種の発見報告”が別問題であることを知らない場合もあるわけです。”STAP細胞"研究の場合は、”細胞の存在・特徴の理論的推定”と”具体的な製法”の研究は別の研究であって、それぞれを一人の研究者がやっているとはかぎらない。

 小保方が”類名の提唱”もやっていたのなら、製法が間違っていても、その後正しい製法が発見されれば「理論的な貢献があった」といえるのですが、小保方は製法の研究だけをやっていたので、その製法が嘘なら彼女の研究には何も残らないのです。

 

 つまりデマのもとになった一連の騒動を、わかりやすくビックフット翻訳すると、

古の科学者「進化論的に考えて、サルとヒトの中間くらいの未発見の生き物がおるはずや。それを類人猿UMAとよぼうや(類の提唱)」

小保方「類人猿UMAおったぞ!こいつビックフットゆうねん!(種の報告)」

小保方「やっぱビックフットおらんかった…。名声欲しさに嘘ついてもうたわ…。すまんこ(無能)」

ドイツ研究チーム「類人猿UMAおったから、ゴリラって命名したった(有能)」

っていうことですね。ビックフット翻訳有能杉内。

 

 まとめてみたら、”類名”と”種名”の意図的な混同がミソみたいですね(発見)。だからと言って短文でこれを伝えられる気はしない。陰謀論者は滅びろ。